子供をバイリンガル環境で育てるべきかについて

アメリカ在住の日本語話者の人々と、子供のバイリンガル教育についての話をすることがある。観測範囲では、日英バイリンガルのプレスクールに通ったり、週一度の日本語補習校に通ったりと、子供をバイリンガルにするために苦労している親子が多いような気がする。

一方で、たまに聞く言説として「言語習得前に複数の言語を聞かせると脳が混乱してどちらの言語もマスターできない」というものがある。日本語でぐぐるといろんなブログなどが引っかかるものの、具体的な研究や統計などに言及したものは見当たらなかった。

さらにいろいろ調べてたところ、2006年にジョージア大の人が出した Raising Bilingual Children: Common Parental Concerns and Current Research という論文(といっても2ページのサマリ)がよく引用されているようだった。同じような疑問を持った人のために以下に要点をまとめておく。

  • 複数言語を話すことが言語能力習得の遅れにつながるという研究的証拠は無い
  • 会話の中で複数の言語を混ぜて話すことは、混乱しているわけではなく、言語能力が習得できていることの証である
  • 第二言語の習得手段としてTVなどの受動的メディアは活用できるが、周りの人間が話しかけてあげるほうが効果的。例えば、"perceptual narrowing"といって普段聞かない音を認識する能力が弱っていくことが、TVなどを活用した場合におこりやすい
  • 複数言語を学ぶことが"bigger, better, brain"になるというナイーブな思い込みは誤り。言語をメタ的に捉えられるようになるなど、限定的なメリットは有る