Week 6

前回書いたとおり今週はロンドンに行ってきた.ロンドンにある大学の院生たちに混じって,とある催しに参加することが出来た.一週間共に作業することが出来て,仲良くなることが出来たのはとても良い経験だった.

彼らの授業の一部を切り出したプロジェクトに,日本からの参加者が混ぜてもらうというかたちで,その内容を聞く限りとても実践的な内容だったので,自分が受けてきた教育との違いを感じていた.だけど,実際にプロジェクトが始まってみると,自分より開発的なものを知っている人はほぼ居ないような状況だった.なんだかんだこれまでのインターンシップや自主的な開発で力がついたのかもしれないなあと思ったし,意外と学生たちのレベルは高くないのかもしれないなあと思った.自分を振り返ってみると,学部生の時にあったグループ演習では結局テーマに興味を持てずコピペプログラムで足を引っ張ってばっかりだったし,まあそんなものなのかもしれない.

イギリスは日本と同じ島国で先進国であり,国民の自国愛も強そうなので,なんとなく排他的な印象があったのだけど,おじゃまさせてもらった大学では留学生の比率のほうが高いそうで,印象としてもほとんど英国人は居なかった.EUとしてビザが要らない・英語が公用語であるというボーダーの低さがあるのだろうか.日本とはだいぶ状況が異なるように思う.

短い間だけどアメリカで働くことが出来て,この理想的な労働環境と仕事内容が日本でも実現出来ればどれだけ素晴らしいかと思う.一方で,狭かった自分の知見が世界へ少しづつ広がるにつれて,日本と他の国との差をどんどん認識するし,日本でこれは無理だなあということも思う.なんか毎週日本に言及している.世界を知るにつれてナショナリズムが強くなっているというのはなんだか皮肉な感じだ.

Week 5

ようやくプロジェクトが本決まりな雰囲気.インターンは正規従業員とほぼ同じ権限を与えてもらっているけど,リソースの割いてもらえ方は決してそうでもなくて,自分から動かないといけない,ということを改めて認識した.

同じチームにブラジルから来たインターンが居て,彼とともに同じプロジェクトを進めていくことになりそう.まだ学部二年生らしいけど,とても優秀だし,よく働く.負けてられんすな.

給料が入ったり,支払いをする必要があったので,口座を開設したり,小切手を使ったりした.ちょっと住んでいるという感じになってきたかも.

ちょっとネットワークを広げた.せっかくこっちにいるのだから,非日本人と仲良くしないともったいないとは思うのだけど,とりあえずは日本の方々ばかり.学内向けサービスつくって2週間で1000ユーザ集めたぜな方と, アメリカ人数人しかいないスタートアップでインターンシップしてる方と,スタンフォードMBA取得中の方にお会いした.MITメディアラボの石井さんのインタビューで,「日本の若者に足りないものは」「足りないのではなく満ち足りているのだと思う」というやりとりがあったけど,「満ち足りている」状況からわざわざ飛び出してきてる人たちは面白い人が多い.

ようやっとプロジェクトに向けてお仕事,という段階だけど,大学関係の都合で一週間お休みをいただいて来週はロンドンへ行ってくる.アメリカ滞在中という特殊な状況にも関わらず予算を出していただいてありがたい限り.ロンドンはとても好きな街なので楽しみ.

Week 4

3分の1が終わった…だと… なんか週が進むごとに進捗が減ってる気がします.これはまずい.今週は特に書くこともないですね.ルームメイトと長く話す機会があったくらいか.彼は将来スタートアップをたちあげて世の中を変えたいのでPh.Dに進む予定らしい.なんというかアメリカっぽい考え方だなあ,と. 一向に英語力が伸びません.どうしたもんか.

僕が博士課程に進まない理由

ルームメイトはPh.Dを取得するつもりらしい.お前はなんでPh.Dに行かないのか,と言われて答えようとしたのだけど,うまく伝えきる事が出来なかったような気がする.せっかく真剣に話してくれたので,ここに文章として自分の答えを残しておきたい(彼は日本語は読めないので僕の自己満足だけど).

なぜ僕がPh.Dを取得しようとしないのか.

本当に世界を変えるようなアイディアはアカデミアから生まれるとルームメイトが言っていた.その通りだと思う.一方で,自分が博士課程に進んだときにそうしたアイディアを生めるかというと,微塵も自信が無い.僕は他人に認められるのが好きで,中途半端に賢いから,適当にそれなりの業績が出るような「研究」をするだろう.

Ph.Dの仕事は世界の外側を少しだけ押し広げて,まだ誰も知らないものを世の中に伝えることだ.とても尊い仕事であると思う.どこを押し広げる事ができて,それによってどんなインパクトを世に与えられるのかは,実際にやってみないとわからないことも多いだろう.数多の巨人たちが気の遠くなるような努力を費やして,世界は少しづつ,だけど着実に広がっていく.

自分もその一人になれたら良いなあと考えることはあったけど,今は別次元の話のように思える.研究室に籍を置かせてもらって一年以上経って,国際会議に投稿・発表もさせてもらったし,世の論文もいろいろ読んだし,輪講会では物知り顔でコメントをするけれど,いまだに「研究」というものがなんなのかよくわからない.

世の研究を見てそれらしい問題をでっち上げて,どこかで見たような方法で解決し,解決したように見えるような評価と,ちゃんと欠点もわかってるような考察を書く.一年くらいかけてこんなことをやっていて,しかも論文に起こしてみると論旨がぐちゃぐちゃだったりする.論文に残らない努力は徒労でしかなく,バグだらけのでっちあげプログラムが上手く働くケースを必死で探しだす.

論文を世に出すために,同じような文章を何度もこねくりまわし句読点の位置を変え,自分に都合の良い角度から関連研究との差分を主張する.もちろんこれは世界のどこを広げることが出来たのか世に伝えるために必要なステップではあるけれど.研究者が1000時間持っていたとして,どれだけの時間が「世界を広げる」ために使えるだろうか.苦しい山を超えた向こうに,ほとんど変わらない世界が待っていたとしても,歩みを続ける覚悟はあるだろうか.自分には,そこまでの覚悟をもって「研究」をすることが出来ないな,と思う.「好きだから研究をする」といのもよく聞く話ではあるけれど,「研究」が好きという状態も体験したことがないのでよくわからない.

結局のところ,覚悟が無いので逃げ出すということなのだろうし,Ph.Dに対するコンプレックスは今後も背負っていくことになるのだろうな,と思う.改めてまとめてみたけど,今日みたいに真剣な相手にPh.Dを目指さない理由を聞かれると回答に窮する他無いのかもしれないな,と思う.

Week 3

もうWeek 3が終わったのか… 今週は前の記事に書いてたレビューのいくつかを通すことが出来た.リリースまで生き残ってくれるかはわからないけど,デバッグ関係とかでは無い機能をようやくコミットすることが出来たので良かった.と,思ったら小さな機能追加で小さなバグを埋め込んでしまい(他の方が気づいて直してくれた)恐縮しきり.一人前とまではいかなくとも,足を引っ張らないようにしないとなあ.

今おじゃまさせてもらっているチームは結構人数が多くて,どんどん開発が進んでいく感じがして楽しい.たまにpullしてみるとだーっとcommitが積み重ねられてたり,先週いまいちだなあと思ってたとこが今週は改善されてたりする.レビューはしっかり見ていただいて,僕は赤をつけられてばっかりだけど,以前インターンさせていただいた別の大企業と比べるとわりと基準が緩くて,スピード感がある.

コードベースに慣れるためのちょこっとした作業はとりあえず終えて,それなりのサイズの仕事を振ってもらった.自分はフロントエンド寄りのことをしているので,とりあえずデザイナが作るプロトタイプを待てとのこと.が,デザイナからの連絡が一向に来ない.何度かpingしてみたが,明日やる,というような返事のまま週を越してしまった.別の作業でも,実装は終わっているのだけどアイコンはデザイナ待ち(上のデザイナとは違う人)の部分があって,そちらも似たような感じで放置されている.これがアメリカのルーズさなのだろうか...もっとちゃんとコミュニケーションが取れたら違うのだろうか,など思う.

本社で働く日本人エンジニアの方・日本支社から出張中の社員の方などとランチをご一緒させていただいた.日本支社の方から「なぜ日本からの新卒入社がほとんどないと思うか」と聞かれたので「日本語の求人ページも無いし,日本支社で開発やってる印象もないからじゃないですかね」と答えた.これはわりと本当にそう思っていて,例えば自分なんかよりもコンピュータの知識やプログラミングの力を持っている学生は日本にも少なからず居る気がしている.一方で,自分含め日本人の一般的な傾向として,英語に苦手意識を持ち,まともな会話が出来ない事が多く,応募には腰が引けてしまうのではないかと思う.テック企業特有のコード面接だと英語ぺらぺらじゃなくてもそれなりにごまかせたりもする,ということを自分はトライアンドエラーで学んだけど,誰もがそういう無謀さを持つわけではない.長期のインターンがあまり一般的でなく,数少ない受け皿であるGoogleやMicrosoftのインターンは神格視されていて,修士課程になってからようやく応募するもの,のような認識があるのもわざわざ海外まで出てこない理由であろう.しかし,こちらでは学部二年生とかでも普通にインターンしてたりするし(もちろん彼らは優秀なのだろうけど)日本の学部生とかでも案外チャンスは有るのではないのかなあと思う.

ルームメイトがやってきた.カリフォルニア育ちUCバークレーに通うアメリカ人でナイスガイである.こっちは今三連休なのだけど,Googleに内定してる彼女とロサンゼルス旅行だといって出かけていった.スケールの大きい話だ.インターンは学部生が多いのだけど,彼は院生で,インターン先のチームも大きいくくりで言えば同じだった.似たような人がルームメイトになるようにアサインしてくれているのだろうか.せっかくの縁なので,仲良く出来ると良いなあ.

Week 2

まだオリエンテーションはいくつかあったけど、ようやく働き始めたという感じの一週間だった。以前別のところでインターンしたときも思ったけど、やはりコードベースが大きくてびびる。個人でプログラム書いてるときみたいに、とりあえず動かしてみるみたいなアプローチだとビルドに時間かかりすぎて詰むので、ちゃんと考えてプログラムを書きつつ、必要であれば手元で簡単に動かすプログラムを作るみたいな感じでいったほうが良さそう。

いくつか小さなコードレビューを投げたけど、世に出るものはまだ一つもレビューを通っていない。一日机に齧り付いても、結果的に数十行しかコードをかけていないような感じでなかなかじれったい。ほとんどが僕の未熟さ故だけど、仕事としてかっちりしたコードを書くというのはそういうことなのかもなあとも思う。

こちらの人々はよく働く。アメリカ人は5時になったらさっさと帰るのかと思ってたので以外だった。ただ平日でもオフィスには来なかったり、夜は家族とご飯を食べに帰ったりしながらも夜中にレビューを返してくれる、みたいな感じでメリハリがしっかりしてるような感じはあるかも。

自転車を手に入れた。それでも最寄り駅までは30分くらいで、街へ行く電車は一時間に一本くらい。ハイテク企業がひしめくこの地域で働きたいなあと思うけれど、やっぱり東京の方が便利ではあるよなあ。車があれば、という話はあるかもしれないけど。

Week 1

インターンシップ一週目を終えた。といっても、水曜日からだったので、まだ3日しか経っていないのだけど、とても長かった様に感じる。いくつかオリエンテーションのようなものがあって、世界中に届くサービスを支える技術の一端を知ることが出来た。あとは、環境を整えたりなんだりで終わってしまった。

同じ日から働きはじめるインターンは10名程度居て、ブラジル・南アフリカ・ウクライナ・カナダなど、まさに世界中から集まってきているという感じ。自分が一番英語が下手くそだという印象を受けた。カジュアルな会話だと全然聞けないし、行ったことを聞き返されることも多くて凹む。しかし、数日経ってみると外国人でも無口な人はそれなりに居るし、発音の上手さもまちまちなので、ある程度押しの強さみたいなものがあればなんとかなるような気もしてきた。英語に自信が無いので黙っていたら、他の人が同じようなことを後から言う場面がなんどかあった。主張しまくって失敗しまくりながら学ぶ方がアメリカっぽいかもしれない。まあ、そんなにうまくはいかんけども。

数日暮らしてみて、人々のフレンドリーさが印象的だなと思う。スーパーで買い物するだけでもHi, How are you?から始まり簡単な会話があることが多い。まだ面食らってしまって教科書どおりのfine, thank youで会話が終わってしまうけど、こういう会話を楽しめるようになりたいなあ。

世界中からいろんな人が集まってきているだけあって、お互いがお互いにおおらかなように思う。それぞれ出自はあるけど、それはあくまでバックグラウンドでしかなくて、ある輪に入りたい人には基本的に道が用意されている様に感じる。救いを求める人に喜んで手を差し伸べてくれるような人がたくさんいて、良い環境だなあと思う。自分は黙ってしゃかりきに一人で作業してしまうことが多いので、ちょっと気をつけて顔をあげないといけないなあ。